ホーム > 今週のドクターコラム

今週のドクターコラム

No.101
心身症について考えてみよう。

「ストレスのせいか、胃の重いのがずっと続いている。もしかしたら重い病気かもしれない」
最近、ご家族や留学生からのご相談が増えています。

経済が好調だった時代の駐在や留学と違い、今は、非常に強いプレッシャーを感じながら駐在、留学をしている方が多いようです。
そうした影響が、駐在員を支えるご家族に出ているようにも思いますし、また留学生も楽しいばかりの留学ではなくなっているように思います。

そこで、今回から、数回にわたって、心身症をとりあげます。


その1 定義

心身症とはどんな病気なのでしょうか。

定義は『心身医学の新しい診療指針』(日本心身医学会1991年)にて定められています。内容をわかりやすく説明すると、「心身症とは身体に生じる病気のうち、発症に心理社会的要因が密接に関係しているもの」です。
うつ病や神経症などは省きます。


その2 発生頻度

3人に1人の割合????
臨床においてそれぞれの該当診療科にて対処療法が行われており、総患者数の把握が困難なんです・・・


その3 原因

心理社会的要因が元となって発症します
つまり自分の本来持ち合わせている性格(神経質等)や行動パターン(いつも他者に合わせる等)、ストレスなどの事ことです。

ストレスとは・・・身体に何らかの反応を起こさせるもの『ストレッサー』によって生じる生体反応のことです。

ストレッサーの種類には次のようなものがあります
・ 精神的要因・・・将来の不安、人間関係や環境など
・ 身体的要因・・・睡眠不足、病気やケガ、慢性疲労
・ 環境的要因・・・騒音、環境汚染、温度・天候・気圧の変化
 
〜発症の一例〜
 
例えば、胃・十二指腸潰瘍は主に消化器内科や外科で治療を受けることが多い消化器疾患です。
 
しかし発症やその後の経過を調べてみると、心理社会的要因が関係していることが明らかになるケースがあります。
 
ある患者さんは異動を伴う転勤や昇進など新しい人間関係を構築しなくてはならない環境変化が生じるたびに、胃潰瘍になり病院を受診していました。この場合転勤や昇進という「社会的」状況の変化が、症状の再発に関係していることが分かります。この患者さんは新しい人間関係づくりがストレスとなって症状を形成していたのです。
 
このように病気の始まりや経過に心理社会的要因が影響している時、その病気を「心身症」と呼びます。心理社会的な問題は、心の中で葛藤状況を生じさせ、脳や神経の働きに影響を及ぼします。心身症ではこうした精神的に不安定な状態が身体症状として出現していると考えられています。そして心と体は一方通行では留まらず相互作用を示すので、身体的な不調が今度は心の不調へとループしていきます。そのため心身症ではココロとカラダの両面からの治療が必要となります。
 
 

執筆 ジェイアイ担当ドクター 外科医 榊咲千代  


ご相談はこちらから

カテゴリ



バックナンバー