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今週のドクターコラム

No.201
家庭内温度差の危険性

   春と秋は過ごしやすい気候の日が多い日本でも、寒い冬と暑い夏はエアコンなどによって室温が調整されています。海外で暮らす人の中には、極寒/常夏と呼ばれる土地の住んでいる場合など、年中エアコンのお世話になっている人もいるかと思います。
リビングなどの生活空間を快適な温度に保つことは、健康を維持するためにも大切なことです。一方で、室内または部屋ごとに生じる温度差の危険性を認知している人はあまり多くないようです。

急激な温度差は、血管の伸縮によって体温調整を図り、血圧を急変動させてしまいます。特に温かいところから寒いところへの移動は、血管の収縮を引き起こし、血圧を高上させます。その結果、脳卒中や脳梗塞のリスクが高まると言われています。


家の中でも、大きな気温差が生じやすいのが、トイレやお風呂場、廊下です。特にトイレやお風呂場は窓に面していることが多く、外気の影響を受けやすいという性質をもっています。
また、廊下やトイレは、使用するタイミングのことを考えても、前もってあたためておくことに向いていません。お風呂場も、最近では浴室暖房が普及してきましたが、お住まいの地域や家の設備によっては温度調整が難しい場合もあります。

「トイレは寒い/暑いな」と気づいていても、使用する時間が短いために気にしない人もいるでしょう。しかし温度差を気にしないでいた結果、トイレやお風呂の室温がリビングなどと比べて10℃以上も違ってしまうというケースは、少なくないようです。その分だけ、リスクが高まっていることには気づかない人がほとんどでしょう。

また、トイレやお風呂場は、衣服を脱ぐという特殊な環境であり、体が室温の影響を受けやすいという側面もあります。
特にお風呂場は、「部屋に入る → 服を脱ぐ → お風呂に入る」と、3段階にわたって体が温度差に影響を受けることになり、心不全や心筋梗塞、脳卒中といった心血管病による死亡リスクが高まります。
厚生労働省が発表した調査によると、平成21年に家庭内で起きた死亡事故の実に3割以上が浴室での転倒や溺死となっており、浴室での死亡者数は年間で約4000人にも上っているのです。


特に、飲酒時や高齢者は、温度差に対する感覚が鈍くなりがちです。日ごろから、リビングや寝室から廊下やトイレに出る際には1枚羽織ったり靴下を履いたりと、体を温かく保つことを習慣づけるように心がけましょう。
 入浴時も、浴室をあたためたり、衣服を脱ぐのに時間をかけたりするなど、体の温度変化をゆるやかかつ最小限に抑えるような工夫が大切です。

家の中での適温や温度差によるリスクなど、詳しく知りたい場合は、担当ドクターにご相談ください。


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