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今週のドクターコラム

No.175
食事その1~PFCバランス

食材や食文化が違う国で、日本と同じ食生活を送ることは非常に困難です。条件や環境が異なる場所において健康的な食生活を送るためには、栄養の基礎をよく知り、新たな環境における食材や食文化に当てはめて考える必要が生じます。

 一日に必要な摂取カロリーを例に考えてみましょう。体格や活動量によって、必要な摂取カロリーが変化することはよく知られています。体が小さな人よりも大きな人のほうが消費カロリーは多く、事務職の人よりも運動選手のほうが消費カロリーが多いため、必要な摂取カロリーは必然的に多くなります。
 また活動環境の気温も、基礎代謝に必要なカロリー(消費カロリー)の量に大きな影響を与えます。北極圏や南極圏においては、温暖な地域よりも約15%ほど多くのカロリーが必要になると言われています。
 映画『南極料理人』のモデルとなった海上保安官・西村淳さんは、南極観測隊に調理隊員として参加した際には一日の食事の総カロリー目安を6000kcalに設定していたと言います。日本で生活する成人男子の一日の総カロリー数は約2000〜2500kcalですから、およそ2.4〜3倍にあたります。南極観測隊員の人が東京で南極と同じ食生活を送っていたら、たちまち太ってしまうことは間違いありません。


 また、健康的な食生活について考えるには、摂取カロリーだけでなく、栄養のバランスを考慮する必要があります。栄養バランスが悪いと、摂取カロリーは充分でも、肥満や成人病などの病気を引き起こす要因になります。

 栄養素について考えるときに、重要になるのが毎日多くの量を摂取する必要のある「3大栄養素」です。タンパク質、脂肪、炭水化物の3つを指し、摂取カロリーをベースにした三大栄養素の摂取バランスを、タンパク質(Protein)、脂肪(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)、それぞれの頭文字をとってPFCバランスと呼びます。
 このPFCバランスを守る食生活を続けることが、健康的で太りにくい体を作る前提となります。日本の栄養学では、1日の摂取カロリーにおける理想的な割合を、タンパク質:15%、脂質:25%、炭水化物:60%としています。中でも、脂質のカロリー比率をしっかりと25%程度に抑えることが、生活習慣病を予防するためには大切だとされています。

 気をつけなければいけないのは、PFCバランスで示されている比率はあくまでも摂取カロリーであり、分量ではないことです。同じグラム数でも、摂取カロリーはPFCそれぞれで異なります。重さあたりの摂取カロリーは、タンパク質と炭水化物はそれぞれ1グラムで4kcal、脂質は1グラムで9kcalとなります。

 つまり、1日の摂取カロリーが2000kcalの人にとって理想的なPFCバランスは…。
・タンパク質:2000kcal×15%=300kcal (300kcal=75グラム)
・脂質:2000kcal×25%=500kcal  (500kcal=55.55グラム)
・炭水化物:2000kcal×60%=1200kcal  (1200kcal=300グラム)
タンパク質75グラム、脂質約56グラム、炭水化物約300グラムだということになります(これも食材や料理そのものの重量ではなくそれぞれの栄養素の重量であることに留意してください)。

 PFCバランスの良さで世界から注目されたのは、お米を主食として主菜と副菜を備えた日本の伝統的食生活(例:お味噌汁とごはんと魚とおひたし)です。パスタを主食にする地中海型の食事もPFCバランスが良いとされますが、肉食が中心となる洋食は比較的脂質が高くなりがちです。ご自身のいる地域のPFCバランスをよくつかみ、家での食事でうまくコントロールするように心がけてみてはいかがでしょうか?


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