No.191
うつ病の人との接し方
「うつ」の人が増えていると言われています。
「うつ」には、医師によって病気と診断された「うつ病」と、状態を示す「うつ」があります。いずれも気分の変調や意欲の低下、思考の停滞、身体的な不調などが表れるために混同されがちですが、「うつ病」と「うつ状態」は同じではありません。
「うつ病」と「うつ状態」の一番の違いは、病気として医師の診断がされているかどうかにあります。
「うつ状態」は、健康な人にも一時的な状態として表れます。受験や就職、失恋など人生における大きな失敗で「うつ状態」に陥る人は少なくないでしょう。「うつ状態」のたいがいは治療の必要もなく時間の経過などで健康な状態を取り戻していきます。
症状として「うつ状態」が表れる病気は「うつ病」以外に、統合失調症やパニック障害、摂食障害、脳梗塞など多数あることは意外と知られていません。
「うつ病」治療の基本となるのは抗うつ薬を中心とした薬物療法ですが、周囲の理解や支援も重要な役割を果たします。では、身近に「うつ病」と診断された人がいる場合には、どのようなことに気をつけながら対応していけばいいのでしょうか?
「『がんばれ』と言ってはいけない」「励ましてはいけない」などは、常識として広く浸透してきています。
うつ病の人と接する際の意識や姿勢について、重要なポイントを5つ挙げると次のようになります。
・ゆっくりと時間をかける
・考えを押し付けない
・じっと耳を傾ける
・決断を迫らない/判断のヒントを提示する
・対等または下手からの発言を心がける
「うつ状態」や「うつ病」の人は、考えるスピードが穏やかに、言葉も出にくくなりがちです。元気なころの会話と同じテンポでは話が進められない場合がほとんどです。返答をせかすのではなく、気長に接するようにしましょう。相手の中でしっかりと答えが生まれるのを、あせらずに待つことが大事です。いくら待っても相手が返答に困った顔をしているようであれば、自分なりの考えを「〜と思うんだけど、どう?」など穏やかに示しながら、会話を続けるのも手です。「YESかNOか?」など極端な選択を迫るのは、絶対に止めてください。
できるだけ当事者のストレスにならないような言葉や態度で、時間をかけて気持ちのやりとりをするように心がけましょう。大切なのは、「うつ状態」や「うつ病」の人の気持ちをしっかりと受け取り、支えることです。
特に気をつけたいのが、状態がよくなってきたように見える段階での接し方です。目に見える不調が減ることで周囲がよろこぶと、「もっとよくならなくては!」というストレスから状態が悪化するケースが少なくありません。状態がよくなったように見える段階で多くの自殺者が生まれているのも、うつ病の真実です。
うつ病患者の特徴や留意点、家族・兄弟・上司・部下など立場による具体的な接し方などについて知りたい方は、担当ドクターにご相談ください。
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