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今週のドクターコラム

No.183
あぶら(油分)の上手な摂り方

海外での食生活には、日本食と異なる点がいくつもあります。あぶら(油分)の摂取も、注意すべき違いのひとつです。
和食に比べて欧米の食事には、より多くのあぶらが多く含まれています。

あぶらというのは、適量を摂取することで体調管理や体質改善にも役立ちますし、不足すると体に悪影響も表れます。また人間の脳は6割があぶらでできているため、摂取する種類や量によって脳も大きな影響を受けるとされています。

人間の身体にとってあぶらは、重要なエネルギー源となります。また、ビタミンの吸収を高めたり、ビタミンEを供給したりする役割もあります。n-9系脂肪酸(オレイン酸など)は、血中コレステロール値を下げる働きがあることで知られています。
必須脂肪酸は、細胞膜やホルモンの原料になるなど重要な役割を果たします.特にn-3系脂肪酸は、免疫機能を高める働きがあるとして注目されています。しかし必須脂肪酸は人間の体内で合成することができないため、食べ物などから摂取しなければなりません。

他方で、あぶらはカロリーが高いため、健康の大敵だと思われがちです。
肉類やバターなどの動物性脂肪は、摂取量が増えることで血液中のコレステロール値を上昇させ、動脈硬化につながります。心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中の原因になるとも指摘されています。また、動物性脂肪などあぶらの摂取量が多すぎるとメタボリックシンドロームの原因になったり生活習慣病を引き起こしたりします。
最近では、リノール酸など不飽和脂肪酸の過剰摂取がアレルギー性炎症を促進させるという指摘もあります。(アレルギー患者や花粉症の原因としても示唆されています.)


厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」において脂質は「脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、コレステロール」と定義されています。必須脂肪酸であるn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の摂取源として、n‒6系は大豆油やコーン油、サフラワー油などの食用調理油、n‒3系は食用調理油由来のα‒リノレン酸と魚介類由来のエイコサペンタエン酸・ドコサペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸が挙げられています。
必須脂肪酸は一般的な食生活を送ることで不足が生じることはないとされていますが、脂質全体については一定量が一日の食事の中で摂取されることを推奨しています。

 具体的には、総エネルギー量のうちあぶらエネルギー比率は20〜25%が望ましいとされています。総エネルギー量2000kcalの人で約45〜55gということになります。成人男性は約50g、成人女性は約40gを目安としておくといいでしょう。
アメリカをはじめとする先進国の多くでは、あぶらエネルギー比率を30%程度に定めている国も少なくありません。そういった国で気にせずに食事をしていると、脂質過多になるのは目に見えています。

なお、食事や食材に含まれるあぶらには、目に見えないものも含まれます。あぶらの原料となるのは大豆や菜種、ゴマなどの植物と、牛や豚などの動物ですが、豆や穀物、肉や魚といった食材自体にもあぶらが含まれています。このような「見えないあぶら」は、実に全あぶらの70%以上を占めます。
あぶらをバランスよく摂取するには、これらの「見えないあぶら」にも配慮する必要があります。見えるあぶらの摂取量としては、一日に10g程度が望ましいとする計算もあります。

あぶらの正しい知識をもとに、適量を摂取して、健康的な生活を送れるようにしましょう。


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