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今週のドクターコラム

No.197
ノロウィルス

  ウイルス性食中毒のなかでも、よく知られるのがノロウイルスです。
日本では冬になると取りざたされることが多いノロウイルスですが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は一年を通して発生しています。
世界的にも広い地域に分布しており、北半球ではアメリカやイギリス、フランスやスペインなどヨーロッパ各地、南半球ではニュージーランドやオーストラリアなどで感染が報告されています。

ノロウイルスの知名度は近年急激に高まっていますが、そもそもノロウイルスは2002年8月に国際ウイルス学会で正式に命名されたばかりのウイルスです。
もともとは1968年にアメリカ・オハイオ州の小学校で集団発生した急性胃腸炎で発見されたウイルスで、発見された土地名を取って「ノーウォークウイルス」と呼ばれていました。その後、ノーウォークウイルスに似た形状のウイルスが次々と発見され、一時的にすべてのウイルスが「ノーウォークウイルス」あるいは「小型球形ウイルス」と呼ばれるようになりました。ウイルスの遺伝子が詳しく調べられていくうちに「小型球形ウイルス」には2種類あることが分かり、2002年になって「ノロウイルス」と「サポウイルス」と明確に区分・命名されたのです。


感染の主な原因として、汚染された二枚貝を十分な加熱処理なしに摂取することがあります。また、感染した食品取扱者を介した二次感染も近年は大きな原因となり、問題視されています。
しかし食品中に含まれているノロウイルスは検出が非常に難しいという特徴があるため、食中毒の原因究明や感染経路の特定は容易ではないのが実情です。厚生労働省が調査した食中毒事例では、約7割で原因食品が特定できていません。特定できない食中毒の中には、汚染された食品が原因となっているケースも多いとされています。

ノロウイルスは、感染後24〜48時間の潜伏期を経て、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れます。微熱が出たり、軽い風邪に似た症状を示すこともあります。幅広い年齢層で感染が見られ、ごくまれに死亡するケースもあります。
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤は見つかっていませんが、通常は症状が1〜2日続いた後に自然治癒し、後遺症が残ることもありません。

ノロウイルスによる急性胃腸炎への対処としては、水分と栄養の補給を十分に行うことが一番です。飲んでも吐いてしまう場合には、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。また、下痢止め薬の使用は回復を遅らせることがあるので避けてください。

ノロウイルスによる食中毒を予防するには、加熱が必要な食品をしっかり加熱すること、調理前や食事の前、トイレに行った後の手洗いをしっかりすることが重要です。また、調理代や調理器具をしっかりと殺菌することも効果的です。煮沸消毒、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒などが有効と認められています。


ノロウイルスの怖さは、二次感染の高さにもあります。日ごろの手洗いや食事に対するちょとした気遣いで、感染の拡大を予防しましょう。ノロウイルスを含む食中毒について、より詳しい情報が知りたい場合は、担当ドクターに連絡してみてください。


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