ホーム > 今週のドクターコラム

今週のドクターコラム

No.178
水道水と飲料水~その2

健康的な食生活についての第2回です。前回は、毎日一定量を摂取しなくてはならない三大栄養素の面から「PFCバランス」についてお話をしました。
 自然水の硬度は、水源と地質によって決まります。ドイツやデンマークなどヨーロッパは硬水の地域が多いですが、アメリカは同じ国の中でも土地によって水質が異なります。ニューヨークやロサンジェルスなど海外沿いの地域は軟水が多く、ラスベガスなど内陸部は非常な硬水です。軟水の国として知られる日本も、山間部などは水が特にやわらかく、サンゴ礁が土壌となる沖縄は国内で唯一と言える硬水です。

 水道水の質は、その土地の自然水に近いものになります。つまり、自然水が軟水の地域の水道水は軟水、自然水が硬水の地域の水道水は硬水であることがほとんどです。
 ただし、水道水を安全でおいしく飲用にできる国や地域は数十カ国と言われます。国や地域の水道基準などを把握し、調理などに使用する際には硬度以外の水質にも気をつけましょう。
 上水道の基準が厳しい国や地域でも、水道水が飲用や調理用に向かない場合があります。特にアメリカやオーストラリアなど、虫歯予防の観点から水道水のフッ素化が行われている地域があります。日本では歯磨きの原料にも使用されるフッ化物が水道水に添加されることで、自然水とは異なる効果や味が生まれます。フッ化物の身体への影響はさまざまな国で議論されているところでもあり、その効果については賛否両論あることにも留意しましょう。
 水道水の安全性や添加物については、地域の水道局等で確認できます。


 水道水・自然水を問わず、水に含まれるミネラル質の量は、それぞれの土地の食文化にも大きく関係しています。水の硬度が調理法や料理に与える主な影響は次の通りです。

硬水(カルシウムやマグネシウム分が豊富な水)

  • カルシウムが肉のタンパク質と結びついてアクが取れる(肉料理や煮込み料理に向く)
  • エスプレッソなどの苦みや渋みを抑える
  • ミネラル分を補給できる

ミネラル分が食材の成分と結びつくため、硬水を使った調理では味や食感に変化が生じます。そのため、煮込んで出汁を取る料理に向いています。ヨーロッパや中国などに煮込み料理が多いのは、水の硬さゆえです。また、硬水を使う地域では、調理器具や食器にミネラル分が白く残ったり、洗剤のあわ立ちや汚れの落ちが悪かったりします。

軟水(カルシウムやマグネシウム分が少ない水)

  • 出汁などのうまみ成分を引き出す
  • お米をやわらかく炊き上げる
  • お茶やコーヒー、ウィスキーなどの香りを引き出す

「出汁文化」とも言われる繊細な味わいの和食は、軟水の地域だからこそ生まれた調理法だといえます。素材の味を生かす調理に向いています。また、軟水は胃腸など内蔵への負担が低く抑えられるため、お腹が弱い人や乳幼児などに適しています。

 地域の水道水やミネラルウォーターの成分表示などを参考に、調理法や料理によって水を使い分けてみてはどうでしょうか? 家での和食や日常的な飲用には柔らかめの水、ミネラル補給や硬水を使う地方の料理には硬めの水、というように。


 最後に、ヨーロッパなどのミネラルウォーターは、炭酸ガス入りが一般的です。自然に炭酸ガスが含まれた水と後から炭酸を足したものとがありますが、成分に大きな違いはありません。炭酸ガス入りのミネラルウォーターは、慣れないと苦味や刺激を感じ、下痢など体調の変化を引き起こすこともあります。買い物やレストランでの食事の際などは、ミネラルウォーターの硬度に加え、炭酸の有無もよく確認するようにしましょう。


ご相談はこちらから

カテゴリ



バックナンバー