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今週のドクターコラム

No.182
お酒について~2. 脳に与える影響

 適度な飲酒が疲労感を和らげ、食欲を増進させるなどの効果を持つことは、広く知られています。また、日本では飲酒をストレス解消に役立てる文化も脈々と受け継がれてきています。

 口から体内に入ったアルコールは、2割が胃、残りの8割が小腸から吸収されます。他の食物や飲料と異なり、アルコールは消化を受けることなく吸収されます。吸収のスピードは早く、飲酒後1〜2時間程度でほぼ吸収されるとされています。吸収されたアルコールは血液を介して全身の臓器に送られていきますが、もっとも早く影響を受けるのが脳です。

 脳の中でも、真っ先に影響を受けるのが脳の表層にある大脳皮質です。大脳皮質は知覚や思考、記憶などを司ります。お酒を飲むと、頭の働きが鈍くなったり気が大きくなったりするのはこの影響です。
 次に、大脳皮質の働きに抑制されていた大脳辺縁系が活性化します。大脳辺縁系は、感情などを司ります。お酒を飲むと、感情が増幅したり興奮しやすくなるのは、この影響です。

 その他、アルコールが脳に与える影響は次の通りです。

  血中濃度(%) 酒量(目安) 酔いの状態 脳への影響


0.02〜0.04 ビール中びん1本
日本酒1合
ウイスキー・シングル2杯
気分さわやか
肌が赤くなる
判断が少し鈍る



大脳皮質・大脳辺縁
系に影響





0.05〜0.10 ビール中びん2本
日本酒2合
ウイスキー・シングル3杯
ほろ酔い気分
体温が上がる
呼吸・脈が速くなる
ほ 
ろ酩
よ酊
い初
極期
期 
0.11〜0.15 ビール中びん3本
日本酒3合
ウイスキー・シングル5〜7杯
気が大きくなる
大声になる
集中力の低下
立てばふらつく


0.16〜0.30 ビール中びん4〜6本
日本酒4〜6合
ウイスキー・シングル8〜10杯
千鳥足
同じ話を繰り返す
吐き気をもよおす
傾眠傾向
反社会的行動



小脳にまで影響


0.31〜0.40 ビール中びん7〜10本
日本酒7合〜1升
ウイスキー・ボトル1本
歩行困難
意識混濁
言語支離滅裂
荒い呼吸

海馬にまで影響
(記憶障害)


0.41〜0.50 ビール中びん10本以上
日本酒1升以上
ウイスキー・ボトル1本以上
昏睡状態
大小便を失禁
呼吸麻痺(停止)
脳全体に影響
(呼吸中枢に影響すると
死にいたる)


 少量のアルコールは、緊張を緩め、リラックス効果も高く、活発な活動につながります。寝つきやすくなることでも知られるのですが、就寝1時間前に飲んだアルコールは睡眠の後半部分を覚醒させてしまうことがわかっています。


 急激な飲酒や習慣的な大量飲酒は、命に危険な事態を引き起こす可能性を高めます。急激な飲酒が引き起こす急性アルコール中毒は死に至ることもありますし、飲酒はうつ病の希死念慮ともかかわりが深いとされています。

 習慣的な多量飲酒は、アルコールへの依存を引き起こしかねません。アルコールとの付き合い方に迷いがある方は、担当のドクターにご相談ください。


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