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今週のドクターコラム

No.204
うつ病と糖尿病

  うつ病と糖尿病

 厚生労働省の調べによると、日本全国で医療機関を受診している糖尿病患者は約240万人で、うつを含む気分障害の患者は100万人を越えているそうです。
医療機関を受診していない糖尿病患者の推定数が約1000万人であることやうつ病の受診率の低さを考えると、日本人におけるうつ病の割合は15人にひとり程度と推測されます。

 ともに国民的な病気と言えるうつ病と糖尿病ですが、意外と知られていないのが、糖尿病患者はうつ病になりやすく、うつ病患者も糖尿病になりやすいという事実です。

 精神・神経・筋・発達障害の4分野で世界的なレベルの研究を推進する国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の社会精神保健部では、糖尿病とうつ病とのかかわりを一大テーマとした臨床研究が進められています。
 糖尿病患者のうつ病有病率は一般人の2倍となり、糖尿病に関する医療費もうつ病がない場合に比べてうつ病がある場合は4倍以上となるという研究結果も示されています。

 しかしうつ病と糖尿病の相関関係については、神経学・内分泌学・免疫学・行動学などさまざまな側面からの研究がすすめられていますが、原因や因果関係について詳しいことはまだわかっていません
可能性としては、うつ病特有の思考力の低下に伴って糖尿病治療に重要な血糖値の自己管理が難しくなること、抗うつ剤の服用に伴う体重増加の影響、うつ病に伴う運動不足、糖尿病を伴う暮らしへのストレスの影響などが、うつ病と糖尿病の併発につながるのではないかと言われています。
また上記の可能性から、うつ病が糖尿病治療の妨げになり、糖尿病がうつ病を悪化させる要因になりえることも示唆されています。

 近年では、うつ病を併発している糖尿病患者は認知症リスクが高いという研究結果が次々と示されています。2型糖尿病患者がうつ病の診断を受けた3~5年後に認知症となるリスクは、非うつ病患者に比べて2倍であるという研究結果もあります。

 糖尿病とうつ病を併発している患者の約半数は、うつ病の自覚がないとも言われています。重要なのは、糖尿病とうつ病が併発していることを理解し、適切な治療を受けることです。

 糖尿病とうつ病が併発している場合でも、専門家の適切な対処によってうつ症状は改善されます。糖尿病で医療機関を受診しているのになかなか状態が安定しない人は、うつ病など他の病気を併発している可能性を疑ってもいいかもしれません。

糖尿病とうつ病、あるいは他の合併症について詳しいことが知りたい場合は、担当ドクターにご相談ください。


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