仮眠の効果とは?
仕事の生産性を上げるには、仮眠をとることが有効だという認識が少しずつ広がってきています。
仮眠をとるとなぜ、生産性が上がるのでしょう?
生産性向上という言葉には様々な側面がありますが、
ここではひとまず「脳がしっかり働く」ことと定義して、話を進めてみます。
私たちは、起きている時間が主体で、眠っている時間は休息という認識をもっていますが、
脳にとっては、「覚醒」と「睡眠」は常に表裏一体の現象です。
脳が目覚めたり、眠ったりするには、次の図のような段階があります。
①まず、私たちは、目覚めているかぎり何もしていなくても脳の中に睡眠物質プロスタグランディンD2がたまっていきます。
このプロスタグランディンD2はアデノシンンという物質に変わります。
②アデノシンは、GABAの働きを促進します。
GABAはもともと抑制性ニューロンなので促進されると、次の神経を強く抑制します。
③GABAはヒスタミンを抑制します。
④覚醒物質であるヒスタミンが抑制されると脳は眠ります。
このような仕組みです。
これらに対し、私たちは様々なアプローチを試みます。
眠気覚ましのカフェインは、②をブロックしてGABAの働きを弱めます。
それで脳が目覚めるのですが、プロスタグランディンD2は脳にたまっているので、
正確には「脳は眠いまま眠れなくなった状態」です。
睡眠薬は、③のGABAを促進します。
いわゆるベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬です。
脳の興奮を抑制させるGABAの働きを助けるのが役目なので、
GABAが働きやすいように眠る準備が整った状態で一番効力を発揮します。
市販の睡眠薬やかぜ薬は、④の覚醒物質ヒスタミンの作用をブロックすることで眠気を誘います。
ヒスタミンは脳を覚醒させる物質です。増え過ぎると、頭痛、かゆみ、鼻炎などの症状を呈し、
そのヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン剤が使われると、副作用で眠くなります。
この仕組みを利用したのが、市販の睡眠薬です。
では、仮眠の作用とは何か?というと①のプロスタグランディンD2自体を減らします。
睡眠はリズムなので、睡眠物質が減ると、脳はしっかり覚醒し、しっかり覚醒した分、その次にはしっかり眠ります。
仮眠は、その直後の脳の働きを高めるだけでなく、次の睡眠まで充実させる作用があるということです。
仮眠をとると生産性は向上する。
その背景には、こんな根拠があるわけです。